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離婚原因の具体的な例

① 離婚原因1夫や妻の浮気

いつの世でも、一夫一婦制の婚姻制度をとっている社会では、「不貞行為」は離婚理由の典型です。

結婚観、男女関係に対する見方は、時代によって変わりますから、不貞行為と離婚の結びつきも、性格の不一致を除くと、夫または妻の不貞、男女関係は、婚姻関係事件の申立ての原因の1、2位を占めています。

デートやキスをしただけでも不貞行為になるのか、ズバリ、肉体関係があったときのことを言うのかなど、離婚事件で判例にあらわれたものは、「情交関係」でも「同棲関係」でも・・・継続的な性関係「不貞行為」がほとんどです。

なので、一回限りの「浮気」では「離婚裁判」にまで発展しにくいでしょうが、裁判になったとしても、それだけで離婚請求を認めることは難しいのです。

不貞行為をしたら必ず離婚されるというわけではありません。

また、自ら「不貞行為」をして結婚生活を壊しておきながら離婚請求をしても原則として認められません。

だから、不貞行為があったかどうかの争いになれば不貞行為を理由に離婚請求する側は・・・
 

② 離婚原因2生活費を渡さない

家庭裁判所に申し立てる「婚姻関係事件」の動機別割合で、夫からと妻からのを比較して著しい差で妻からの方が多いのは、「暴力を振るう」と「生活費を渡さない」である。

給料が銀行振込制になっても、通帳、印鑑まで自由にしている妻は別ですが、家計費が年中火の車で赤字続きでは、貨幣経済、流通社会の現代生活を送ることに不満、疲労を覚えます。

女性が結婚条件に高収入をあげることに蔑視することはできないのです。

生活費を渡さない以外に、生活費の使途を含め、一方があまりに金銭勘定に几帳面、細かいことも、(悪くいえば、ケチ・・・)夫婦関係亀裂の一因になるようです。

金銭感覚の相性も大事なことです。


離婚原因3同居義務違反
同居義務を主張して紛争状態にある夫婦は、多くの場合、夫婦のどちらかがいわゆる実家に戻って来ない状態にあります。

里へ帰らせていただきますといった言葉は妻の専用でしたが、近年は比較的若い夫婦のトラブルにあって、夫が実家へ帰ってしまう事例が増えてます。

実家の親が、娘や息子を憫れんで泊め置きますと、去られた夫や妻が同居義務違反だと抗議するのですが、ともすると親を巻き込んだ紛争に拡大しがちで、そうなると、同居を求めて調停を申し立てても難航します。

いつでも・・・帰って来い、もう戻らなくてもよいというタイプの親は困り物です。


離婚原因4.蒸発し行方不明
テレビが普及しだした頃、蒸発した夫や妻の行方を探す公開尋ね人番組が視聴率を上げたようですが、最近はすっかり姿を消しました。

民法は、配偶者の待ち時間を3年としていますが、この場合は、相手は「生死不明」の状況にありますから、調停のすべがなく、「調停前置主義」の例外で、すぐ地方裁判所に訴訟が起こせます。

警察への捜索願など生死不明の証拠を備え手続きをすれば、裁判所の掲示板に掲示する方法で、相手が不在でも判決離婚を得ることができます。


離婚原因5.回復困難な精神病
精神病とは・・・・・高度な精神病のことで、
①中毒性精神障害
②総合失調症
③躁鬱病
④未定型精神病
⑤器質性精神病(脳疾患に起因する)
※健康状態と高度精神病の中間にあるものは「精神病」に属さないと解釈されます。

回復困難とまでは認められないが、入退院、通院を重ね、家庭と職場復帰をくり返すような病状は、本人もそうですが、相手配偶者にも経済的負担、心理的疲労から結婚生活に対する絶望感を与えます。

こういう場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」を理由とします。

最高裁は精神病離婚の場合、病者の離婚後の療養、生活の見通しを問題にしますが、後者の理由による場合にも、この点を問題にしているようです。

改正審議では、精神病離婚の規定を削除する方向で進んでいます。

精神障害者に対する差別感情の助長とプライバシー侵害を考慮したもので、一項五号の問題として取り扱います。


離婚原因6暴力沙汰・侮辱
暴力を理由に離婚沙汰になるのは、二つの型があるようです。

一つは、鼻血が飛ぶ、顔が腫れあがる、身体のアザが絶えない、などの粗暴、、常習的な加虐性の強い暴力で、

他は、偶発的に暴力行為に至ったが、受けた方がこれに拘泥し、夫婦関係のいろいろな面に影響する暴力です。前者が離婚理由になることは明らかですが、後者の方は、一概には言えない場合があります。

何か他の原因があって夫婦間が円満を欠いている状況下で、つい暴力が出たというとき、決定的破局への引き金になることがありますが、諸般の事情から情状酌量の余地もあります。

しかし、暴力は悪の典型ですから、ケガさせて医師の診断書でも出されると、離婚紛争では、大きなハンデになります。


離婚原因7.性格の不一致
離婚問題において「性格があわない」というのは便利な言葉です。

アバタもエクボで一緒になりながら、アバタはアバタと見直したとき、今さらアバタはいやというのも憚られて、性格の不一致と理由づけしたり、熱が冷め何となくいやになったという我が儘、身勝手な動機でも、性格が合わなくて、というと尤もらしく聞こえます。

血液型云々では法感情に響きません。

人の性格は多種多様で、癖一つとっても、なくて七癖あって四八癖ですから、この点がいや、という部分は誰にでもあります。

夫婦関係がこじれてくると、あれもこれもと転移し、性格不一致として相手の全人格まで否定するに至ります。

甘くみると「危険」です。婚姻を継続し難い重大な事由になってしまいます。


離婚の動機として、別にコレと特定できるものはなく、しいて言えば生活観、価値観の違いを挙げるケースがあります。

性格の不一致のように抽象的、情緒的な理由ですから、相手方としてはピンときませんが、お互いの価値観に寛容であると同時に、夫婦共通の生活観を育てるようにしないと、小さな夫婦喧嘩でも決定的な破綻に導いてしまいます。


離婚原因8
性的な不満
性的不満は、離婚原因として直接表面に出ることは少ないのですが、性の円満は結婚生活の重要な「かくし味」といえます。

相談者の理由を検討してみると、性格の不一致、生活上の価値観の違いなど抽象的な理由をだらだらと述べている場合、背後に「性的不満」が澱んでいることがよくあります。

本人へ直接でも、第三者への相談でも明からさまに口にすることに俊巡する問題なので、他の点に摩り替えられてしまいがちですが、避けてはいけない問題です。


離婚原因9.家族との不和
旧民法は、配偶者の直系尊属からの虐待、侮辱、自分の直系尊属に対する虐待、侮辱は離婚原因になると規定していました。

現在は規定こそ消えましたが、配偶者の親族との不和は、今も変わらず、夫婦円満の障害物です。

以前は同居している嫁、姑の確執を典型としましたが、近頃は、夫、妻それぞれの親どおしの不和対立が夫婦間に生じた波風をいっそう煽る結果になっているケースが少なくありません。

親離れ、子放しの必要がいわれますが、少人数の核家族の環境の中で生活してきたことが、親にとっても子にとっても、他の家族との交際下手の下地になっていて、子どもの喧嘩に親が出る、子は親の言いなりになって、円満解決への道は険しいものがあります。


離婚原因10.信仰上の対立
日本は、宗教に寛容というか、無関心である人すら多いようで、結婚に際しても、相手の信教はお互いにあまり問題にしません。

しかし、近年の宗教ブームの反映か、宗教活動に原因する離婚裁判が増えています。

入信の動機が、病気、事故、家庭の不和などの治療、回復にある場合は、深くのめり込み、宗教活動に熱中するので、相手配偶者が著しく不満を抱き、家庭の安息を回復するためには、宗教を改めるか、離婚するかの二者択一しかない、と悩むことになります。

宗教活動の態様、程度によりますが、一つの家庭に二つの宗教は成りたち難く、結婚前に相手の信仰心を確かめることは大事なことです。


離婚原因11.思いやりがない
定年離婚」という流行り言葉があります。

仕事一筋で定年を迎えた夫に、妻も家事の定年を宣言し、新しい自分の生活を創りたいとして離婚を求めるわけです。

何故なんだ?夫には理解不可能です。

永年連れ添ってきた夫婦に、突然性格の不一致が生ずるわけもないでしょうが、妻の方に人生の価値観、生活観の目覚め、反省が生じて、今からでも主体的に生きたいという思いが、まず夫との離婚という形となって表れるのでしょう。

それだけでは判決離婚の理由になりませんが、冷えた家庭内離婚が継続するようですと、回復し難い婚姻関係の破綻→婚姻を継続し難い重大な事由になってきます。


離婚原因12.有責配偶者からの請求
長期間の別居とはどのぐらいの期間かは、婚姻(同居)の期間との比較もあり、具体的な事例ごとに考慮せざるを得ません。

判例変更をもたらした夫婦の場合は、36年でしたが、以後30年→22年→16年→11年と別居期間は凝縮化されてきて、8年については認めた例と認めなかった例があり、今のところ10年の別居がボーダーラインといえます。

もっとも、15年でも棄却した例もあり、あまりに身勝手だと評価されるようだと、信義誠実の原則により、離婚の道は閉ざされます。

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