判例7.夫の悪意の遺棄が原因の離婚
離婚・慰謝料・財産分与「判例7」 ※登場人物等は仮名で表現しております。
7.夫の悪意の遺棄が原因の離婚
結婚期間30年で最後の5年は別居で子供はいません。
結婚後、夫・誠司はいろいろな職業を転々とした末、自動車教習所の技能検定員として落ち着きました。妻・聖子も新聞配達やミシン縫いの内職、実家の援助などで生計を維持してきました。結婚7年目に預金とローンで宅地を購入。二棟の建物を建築し、すべて誠司名義で登記しました。結婚後20年が経った頃から聖子は身体に変調を生じ子宮全摘出手術を受け、その一年余後には脳血栓を患らい「右半身機能不全(障害者等級第四級)」で日常生活もままならない不自由な環境になりました。夫婦間は夫の女性問題、性格の不和などで口論が絶えずしだいに悪化してしまい、誠司は、「俺のものは全部やるから離婚しろ!」と怒鳴ったりしていましたが、ある日突然、家を出てしまい聖子に対しては生活費も送らず一人住まいをして五年経過しました。
注目
聖子の請求は離婚と慰謝料2,000万円、財産分与として前記土地、建物に対し・・・判決は誠司の行為は「配偶者を悪意で遺棄したとき」に該当するとして離婚を認めました。慰謝料・財産分与については財産形成への聖子の寄与、現在の健康状態、日常生活の不自由さ、夫からの送金が一切なかったこと、夫は技能検定員の資格を有して安定した職を得ていること、過去の不貞行為に対する慰謝料など一切の事情を考慮して財産分与として土地建物全部を給付するのが相当であるとし、夫に対し財産分与を登記原因とする所有権移転登記を命じました。離婚後の妻の生活を考えた慰謝料を含めた財産分与と言えます。(浦和地裁S60・11・29判決)
注目 扶養的財産分与とは・・・
扶養的財産分与は、一般的に補充的性質とみなされ、まず清算的財産分与と慰謝料とを請求すべく、請求できないか、それだけでは生計維持に足りないときに請求が認められるとされています。扶養的財産分与の斟酌事由としては、頼るべき親族の有無、要扶養者の有無、健康(稼働能力)のほか、当事者の有責性も問われます。このケースは誠司の有責性が強く、最高裁判例の言葉を借りれば、「離婚後における一方の当事者の生計の維持」をはかったものです。なお、不動産を財産分与で取得したときは、その登記を受けることが肝要で、協議離婚の際には特に注意してください。
離婚・慰謝料・財産分与
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