判例8.妻の精神病が原因の離婚
離婚・慰謝料・財産分与「判例8」 ※登場人物等は仮名で表現しております。
8.妻の精神病が原因の離婚
結婚20年で判決離婚となりましたが、後半10年は妻が精神科病院に入院、子供が一人です。
良人と益子は学生時代に知り合い、卒業二年目に結婚しました。結婚当初から益子の自己中心的非現実的な言動が目立ち、三年目には精神分裂症様の症状で一年半入院したのをはじめ六年目に半年、八年目に二ヶ月、10年目からは精神分裂病(現在は統合失調症と言う)として入退院をくりかえしました。現在では軽快して退院可能ながら完全には治っておらず現実離れの傾向があり、夫や娘に関心がなく、かすかに人格の崩壊が見られるものの意思能力を欠くというほどではありません。夫からの離婚請求に対し判決は・・・ 精神分裂病ではあるが、強度で回復の見込みがないとは認められないから、「七七〇条一項四号(回復の見込みがない精神病)」による離婚原因にはあたらない、としたものの同項五号による婚姻をし難い重大な事由があることを理由とする請求は正当であるとして認めました。
注目
判決は・・・
①夫婦の結婚生活は遅くとも妻の二回目の退院の頃から破綻している。
②その主な原因は、妻の家庭的でない言動にある。
③発病の主な原因も、むしろ幼女から彼女を甘やかしてきた妻の家庭環境にある。
と認め、実家の母親同様の寛大さを夫に求めることは難きを強いるものであると述べています。そして、良人の現在の社会的地位、収入、これまで妻の医療費を出してきたこと長女の親権者となることを考慮の上、なお益子の将来の経済的問題についても配慮するとして財産分与1,000万円の支払いを命じました。扶養料的要素の濃い財産分与といえます。しかし、慰謝料については良人は婚姻破綻の有責当事者ではないとして支払う義務はないと判決しました。
(東京地裁S57・8・31判決)
注目 強度の精神病と保障
精神を病んだ配偶者との離婚では、財産分与の扶養面が重要な問題です。回復の見込みのない強度の精神病の場合は、最高裁判例は、離婚後の治療、生活の保障を求めています。その程度には至らないが、かなり重篤な症状の場合、判例の当然の射程内とはいえませんが、離婚になっても、病者が社会的、経済的に著しく過酷な状況に置かれないということが、離婚判決を認めるか否かの判断に影響を与えるものと思われます。したがって、請求する側は、扶養的財産分与をできるかぎり誠実に行なうべきでしょう。病気でない配偶者にあまり厳しい負担を課することもどうかと思いますが、双方親族の心情も対立しがちで、難しい離婚問題です。
離婚・慰謝料・財産分与
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