判例9.夫の特異な性格が原因の離婚
離婚・慰謝料・財産分与「判例9」 ※登場人物等は仮名で表現しております。
9.夫の特異な性格が原因の離婚
最近指摘されている「熟年夫婦」の離婚のケースです。
二人の子にも恵まれたごく普通の夫婦、章吾、小雪でしたが、夫が停職退職した結婚17年目に判決離婚となったのです。判決によれば、章吾は結婚生活十数年を通し頑なまでにマイペースで・・・たとえば居住不動産の売買、生活費の支給、子供の教育、親戚づきあい、その他いろいろと自分だけの判断で行いました。夫婦で相談・・・などということはなく妻が相談したり尋ねたりしても耳を貸しません。おまけに愚痴ったり非難めいたことを言うとときに手あたりしだいに物を投げつけるのです。(但し、妻に向けるわけではない)。そして、章吾の停年退職後一家4人で引越し準備中のことです。「俺の部屋は!子どもたちが俺をなめてるぞ!!母親の躾が悪い!」と言って例によって物を投げつけたのです。積もりに積もっていた小雪の憤滿がこのとき爆発しました。「もうがまんできない!!」そう言って身ひとつで家を出、それ以来別居から離婚訴訟へと進んだのでした。
注目
判決は別居状態が四年を経過し和合の気配がなく妻にも至らぬ点はあるが、破綻の主な原因は章吾にあるとして小雪からの離婚請求を認めました。しかし、この判決は小雪の慰謝料請求を棄却しました。妻が精神的苦情を受けたことを推察できるが、離婚の原因は夫の特異な性格にあるのであって夫はことさらに結婚生活を破壊しようとしたり妻を虐待したわけではない。その他の事情を考慮しても不法行為者として慰謝料(慰謝料500万円)支払いの責任があるとまでは言えないとしています。なお、判決は財産分与請求の是非は問題になるが、小雪がこの点の請求をしていないのでここでは判断しないと特に附言しています。(東京高裁S57・11・25判決)
注目 財産分与の付帯申立て
財産分与の請求方法は、当事者の協議、家庭裁判所における調停、審判(家事審判法九条一項乙類五号、同一七条、民法七六八条二項)、訴訟(人事訴訟法三二条)があります。離婚訴訟は家庭裁判所に提起することになりましたが、財産分与の申立を原告がしない限り裁判所はこれについての判断をしません。ケースの小雪の場合、財産分与の付帯申立てをしなかったので、裁判所としては、この点の審理、判断はしなかったのです。小雪はあらためて、家庭裁判所に調停、審判(訴訟はできない)の申し立てはできますが、せっかく離婚の訴訟を起こすなら、付帯申し立てをして、離婚にまつわる財産面もいちどに解決するべきだったと思います。
離婚・慰謝料・財産分与
Copyright (C) ,浜松の探偵|総合探偵事務所アビイ・ロード浜松, All rights reserved.